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僕に迫った大きな影は、なんと野生の馬だった。しかも昼間に空に浮かぶ雲のように白い。白馬というやつだ。
たっぷりとしたたてがみ、しなやかな前脚とがっしりと筋肉がついた後脚、少女のように長いまつ毛の下には栗色の瞳があり、僕を映している。
白いんだな。本当に上質紙のような驚きの白さ…そう心の中で呟いていると、その白馬はきつい表情を僕に向けてきた。そして胴を近づけてくる。
これは、乗れと言っているのかな。でもいいのかい君に跨っても? そっと手を伸ばすと白馬はじれったそうに僕の服を噛んだ。
倒木を足場にして白馬の背に跨ると、その視界の高さに驚いた。僕くらいの人間に肩車をしてもらったくらいの視野になっている。
白馬が動くと、僕は反射的に前かがみになった。両足で白馬の胴をしっかりとはさみ、両腕も白馬の肩と首をがっしりとつかむ。そうしないと振り落とされそうだ。
白馬は体中を揺らしながら駆けていく。恐らく全力疾走しているのだろう。まるで肩車をされたまま全力で走られているような恐怖感を覚える。
でも、どうしてこんなに先を急ぐのだろう。そう思いながら目を開けると、物陰から複数のオオカミが顔を出した。なるほど、僕は狙われていたという訳か。
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