蜘蛛の巣

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私は少し残念に思いながらも、その美しい光景に目を奪われていました。水面に写る空の景色、力強く自らの存在を誇示する稲たち。そして、天高く飛翔する鳥たち。 (こんなにも豊かな世界が私の近くに存在していなんて) 私はすっかり驚いてしまいました。なにせ外に出るのは久しぶりだったので。 (何か他に変わったことはあるかしらん?) 私は外の景色を眺めることをやめ、もう一度車内を見渡して見ました。すると、今まであんなにも大量にあった電車の広告が無くなっていることに気がつきました。 (あら、旅行の広告がないわ!それに、転職の広告も!) 私は少し驚きました。数ヶ月前までは、車内を縦横無尽に張り巡らされていた広告が、今は数枚しかないのです。 (きっと、電車が冬眠しちゃったせいね。だから、こんなに広告が減ったのよ) 私は残された広告を眺めながら、彼らのことを少し可哀想に思いました。なぜって、あんなにたくさんいた友達が、突然いなくなってしまったのだもの。 (可哀想な広告。今じゃ、ひとりぼっち) 私はそんなことを思いながら、ぼんやりと広告を眺めていました。 (あれ、何かいる!)
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