蜘蛛の巣

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私は広告ばかりに気を取られ、広告の前にいた生物のことをてんで気にも留めていませんでした。 (あ、蜘蛛!蜘蛛がいるわ!) 私は心の中で叫びました。なぜって、その蜘蛛はとても大きかったし、しかも、ものすごく立派な巣をつり革を支える銀の棒の上にこさえていたからです。蜘蛛の巣は本当に立派でした。定規で線を引いたようにきっちりと正六角形に作られていました。 (こんなに立派な巣に捕まってしまったのなら、蚊も本望でしょうね) 私はその見事な蜘蛛の巣に感動しながら、こう思いました。しかし、よくよく眺めてみると、蜘蛛の巣の中心にずっと座っている蜘蛛がさっきからピクリとも動きません。私は不思議に思いました。 (蜘蛛さんはどうして動かないのかしらん?もしかして、死んでしまったの?ああ、きっとそうよ。だって、こんなにもエアコンの空気が蜘蛛さんに当たっているんだもの) そうなのです。蜘蛛の巣がある場所は、ちょうどエアコンの風が直に当たる場所であり、蜘蛛にとって、その寒さは真冬のシベリアのように寒かったはずだからです。蜘蛛はやはりピクリとも動きません。
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