蜘蛛の巣

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(ああ、なんて可哀想な蜘蛛さんなの。せっかく、新築の一軒家を建てたばかりなのに。きっと彼はとても素敵な夢を見ていたでしょうね。悠々自適な生活を送りながら、一生過ごすつもりでいたでしょうに。こんなにも早く電車が冬眠から明けるなんて、誰も思わなかったもの) 私はこの不幸な蜘蛛に対して、心の中で手を合わせ、合掌しました。 (来世ではきっと良い生活が送れますように) そんなことを願ってお祈りしていると、これまでピクリとも動かなかった蜘蛛が徐に動き始めたではありませんか。これには私も驚きました。なにせ、死んだと思っていた蜘蛛が急に生き返ったのですから。 (え、蜘蛛さん、生きてたの!?) 私は素っ頓狂な声を心の中で上げ、彼の動きを注意深く観察していました。蜘蛛は素早く身を動かすと、天井に張り巡らした糸をつたって、エアコンの中に入っていきました。この時、私がどんなに驚いたことか。 (まあ、なんてこと!あの蜘蛛さんは、エアコンを隠れ家として利用していたのね。賢い蜘蛛さん!)
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