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式使いの男
「なるほど、ここ数日、何者かに狙われてるんすね」
ある企業の会議室に通らされた御上と茶木は、この会社の重役である40手前くらいの荒木幸太郎から依頼の事情を聞いていた。
「腕のいいボディーガードでも頼みな、俺達は拝み屋だぜ、お門違いだ」
御上は長テーブルに足を投げ出すとタバコに火を付ける。
「もちろん、セキュリティ会社、果ては裏の暴力団にも警護は頼んだんですが、不思議な力で倒され、そこで御上さんの名前を聞いて藁にもすがる気持で」
「ふん、アンタ、呪術屋に狙われてるみたいだな」
「呪術屋?てなんすか?兄貴」
茶木が訪ねると
「裏の世界の暗殺集団だよ。ただよう浮遊霊や、魑魅魍魎を使役して術殺する、
オカルトの殺人は証明が出来ねぇから起訴も逮捕も出来ねぇ、もっとも事故死にしか見えないように殺されちまうがな」
「そんな……どうすれば」
荒木は泣きそうに顔を歪める
「アンタ、今までよく助かってこれたな、奴らは仕掛けて仕損じ無しなんだが……」
「これのお陰かもしれません」
荒木は胸に下げたお守りを見せる
「祖父の代から引き継いだお守りなんですが……中に熊の権現の霊石が入ってるみたいなんですけど」
「ほう、こりゃ値打ちもんだな、とんでもねぇ御霊が眠ってやがる。まあ、それがあれば当分安心だろうさ」
「御上さん依頼の方は」
「悪いが、アイツらとは関わる気はねえ、こっちの命も危険に晒しちまうんでな」
「そ、そんな……」
「高野山の阿闍梨て坊さんを尋ねてみろ、裏の元締めと話つけてくれるかもしれねえ」
「阿闍梨……はい」
「相談料と仲介料に100万だ」
「えっ!」
「世の中タダもんはねえぞ、おっさん。この口座に頼むわ」
そう言うと御上は会議室を後にした
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