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血のしたたる夜
夜更けに御上侑哉が茶木賢也を連れ、向かったのは大きな総合病院だった。
受付で、しばらく待つと、白衣を着た天パでメガネの男は難しい顔で現れると
「御上!」
「なんだ、川原、こんな夜に」
「とりあえず来てくれ」
30前後の川原主水に案内された病室には、女子高生くらいの年頃のボブヘアーの少女がベッドで、うなされていた。
「どう見る?」
そう促され御上は、彼女の首筋のえぐれた傷痕に
「あり得ねーが、吸血鬼に襲われたんだろうな」
「兄貴!吸血鬼て」
後ろに控えていた茶木は目を丸くして驚く
「バカ、でかい声だすな、別に吸血鬼は伝説の化け物じゃねえーよ、吸血鬼ウイルスに感染した人間なんだ」
「えっ!」
「貧血になったり、日光で立ちくらみする程度で、あとは人間と変わらねえ。食事だって同じだしな、物語のように人の生き血を求めるモンスターてのは作り話だ」
「だが、御上、この女性は」
川原が顔を曇らせると御上は鼻を鳴らし
「どっかのバカが、とちくるって襲ったのかもしれねーな」
「どうするんすか?兄貴、やっぱ十字架とか心臓にクイ打つんすか?」
「だから、奴らは人間なんだよ、十字架も効かなきゃ、クイなんか打ち込んでみろ、人殺しで逮捕されちまう」
「かといって、ほっとく訳にもいかんだろ、御上」
川原の言葉に御上は頭を痒き
「面倒くせえな」
と溢した。
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