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Gift
仕事に行こうとしているタイミングだったから、その場で小包を開けることはできそうになかった。だからとりあえず家のなかに入れておいてから鍵をかけ、仕事に向かうことにした。
仕事はというと、まぁいつも通り忙しかった。最近までなかなか外出する空気ではなくて溜まっていたのだろう、ここぞとばかりに店にくる客を捌きながら、定時までひたすら仕事を続ける。いやぁ、これいわゆる『密』ってやつなんじゃねぇの?とか思いながら、それでも働かなきゃ生活も成り立たないと開き直って動き回った。
疲れきって帰った俺を待っていたのは、玄関に置いたままの小包。中身が何なのかはもちろんわからないが、なんだっけ、昨日の危が狂ったような電話では『オメデトウゴザイマス!』とか言ってたんだったか?
何がおめでたいんだかな……そう思いながら、とりあえずSNSを開く。休憩中に自宅に妙なプレゼントが届いたって投稿をしていたからか、通知欄には『何だった?』『開封して撮影してよ』『開けた?』とか、中身に対する興味本位な返信が相次いでいた。元々友人たちのグループが使っていたのに便乗しただけだし、そこで新しく知り合ったやつともすぐに会ったりしているから、繋がっているのは全員気心の知れたやつらだ。
とはいえ他人事だな……とちょっと笑いながら、『帰ったぞー!』と投稿し、さっそく配信用のアプリを起動する――カメラで撮ってからSNSにアップしてもよかったが、コンビニで酒買って飲みながら帰ったからか、気も大きくなっていたのだろう、中に何が入っているとか警戒なんてしなかったのだ。
「そんじゃ今から開けるからなぁ! 開けるぞ、開けるぞーっ!!」
半ば酩酊した頭で小包を開けたとき、俺はコメントを見ながら包装を解いていたから、実のところ最初に中身を見たのは俺ではなく配信の視聴者たちだった。
さんざん中身を催促してきていたやつらが一様に『え?』『え?』『え?』『え?』とコメントしてきているのを見て中身を見たとき、俺も「え?」としか言えなかった。
中に入っていたのは、何個かの小さな赤いもの。伝票を見ると、意図的に歪めたみたいな字で『生もの』と書かれていた。なんだ、生ものって?
ひとつを摘まみ上げてじっと見つめた俺は、その正体がわかったときたまらない寒気に襲われた……!
「うわぁぁぁぁっ、」
情けない悲鳴が喉から漏れたが、そんなの知ったことじゃない! 放り投げたそれは、どう見ても小さな子どものものと思しき、人間の指だったんだ……。
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