<キンノタマ>

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<キンノタマ>

謎の金玉、もとい金の玉を手に取ると今度はカランカランと鐘の音がしてあたりが真っ暗になった。 「えっ?停電?」 何も見えない漆黒の中をぐるりと見渡していると 「おめでとうございます。あなたが選ばれました」 暗闇から聞き覚えのない男の声がする。 テノールの聞き心地の良い声、こう言うのをイケボと言うんだろう。 普通なら周りが真っ暗でキャーと言えば可愛げがあるのだろうが、それ以前に心が暗闇状態だからそんな事では悲鳴すら出なくなっていた。 が、 おかしい、この店には私以外にも女子力が高そうな子が沢山いた筈だ。 二股クズ野郎と高らかに言い放った時にいくつもの視線を感じたのだから。 さらに、選ばれましたと言う声・・・ 目が暗闇に慣れてくると目の前に黒いタキシードに白い手袋の人物が浮かび上がる。 タキシードは暗闇に同化している為、白い手だけが異様に目立っていた。 怪談でよくある白い手のエピソードになりそうだ。 徐々に姿がハッキリとしてくると黒髪に眼鏡がキリッと似合う声と同様のイケメンだった。 「おめでとうございます。選ばれ無かったことが10回になりましたので自動的にガラポンが回りました。見事特賞でございます」 手の平にあった金の玉はいつのまにか消えてスマホに何かの着信があった。 タキシードの男は手のひらでスマホを差すと「どうぞご確認ください」とニッコリと微笑んだ。 スマホの画面には選べるアプリと言うアイコンが増えていた。 もう一度タキシードの男を見ると微笑みながら頷いたため、これを起動しろと言うことなんだろう。 胡散臭いが、ぶっちゃけ今日の私はヤケクソになっている。 アイコンをタップすると選べるアプリが起動した。 おめでとうございます。あなたが選ばれました。 等アプリは恋愛に於いて10回選ばれ無かった場合に抽選を行い今回あなたが当選されました。今回の抽選対象となった10回分からお好きな恋愛を選んで頂くとあなたが選ばれた側と交代できます。 は?ナニコレ?嫌がらせにしては手が込んでいる。てか、失恋なんて10回で済まないと思うけど。 「片思いやちょっといいなと言うものは含まれません」 え?心を読まれた? 「別に心を読んだわけではありません。顔に思いっきり出ています」 「アプリでは対象案件のデータがチラ見できます」 確かに10個の見出しが並んでいてタイトルを見ると明らかに私の黒歴史が並んでいた。
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