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寝過ごす青年
ブーブー……ブーブー……
遠くでスマホが震えている。アラームが指定した時刻を迎えたことを知らせているのだ。
うるさいなぁ。まだ眠たいんだ。
ブーブー……ブーブー……
美味しいご飯を食べる。綺麗な景色を見る。知らないことを勉強する。面白い動画を見て、腹を抱えて笑う。
そうだ、まだまだやりたいことがあったから、最後に思う存分楽しめるように、アラームをセットしたのだ。
ブーブー……ブーブー……。
どうやら鳴り止んだようだ。スヌーズ機能はオフにしているから、もうスマホの騒ぎに気をとられることもないだろう。
僕はたしかにやりたいことがたくさんあった。でもそれ以上に、襲いくる眠気には勝てそうになかった。
今考えると、毎日毎日、「やらなくてはならないこと」に追われすぎていたような気がする。一方で、「やりたいこと」は端っこに積み上がっていって、そのまんまになってしまった。
ああ、今日が最後の日なのに。
「やらなくてはならないこと」を頑張ったけど、今度は限界を迎えてしまい、新たな「やらなくてはならないこと」になったのが、睡眠だったのだ。
このあと滅亡を迎えてしまったら、嫌という程眠れるはずなのに。
僕の「やりたいこと」は今しかできないのに。
何の為に、何を優先してきたんだろう。
ああ、もう瞼が重くて何も見えないなあ。
このままゆっくりと眠りにつくんだね。
そうして滅亡を迎えてしまうんだ。
それでも、ようやく訪れた休息は、悔しくもどうしようもなく心地よかった。
「おやすみ」
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