止まぬ雨に、白を並べて

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───その瞬間、凜美は目を見開いた。 「てるてる坊主が…二つ?」 見間違いかと目を擦るもやはり自分が作ったてるてる坊主の隣にもう一つ、てるてる坊主が並んでいた。 近づいてもう一つのてるてる坊主を見つめる。丸い部分は歪で紙はぐしゃぐしゃ、あまりにも不格好なてるてる坊主だ。 「もしかして晴志さんが…?」 彼は頭が良くて誠実で運動神経も抜群、さらに顔の整った顔と長い背丈は誰もが羨ましがるほど。 堀越 晴志はそれほど完璧な人間だった。 ───ただ、手先が不器用なことを除いては。 凜美はそっとてるてる坊主に触れる。きっと自分がお茶菓子を取りに行った(すき)に彼が寂しくないよう作ったのだろう。彼の不器用な優しさに今度は違う涙が出そうになる。 「……ん?」 何気なくてるてる坊主の後ろを見ると小さな紙切れが挟まっていた。彼女はそっと抜き取って開く。 中には綺麗な字で二行書かれている。 「晴志さん、ずるいよ…」 文を読んだ凜美は胸に抱いて座り込んだ。もしかしたら今頃、彼は船で一人笑っているかもしれない。 「ずるすぎるよ…」 やがて顔を上げた彼女が依然として激しい音を立てる雨を硝子(ガラス)越しに見つめるといつの間にか溜まっていた涙が頬にいくつも透明な線を作った。 この雨も私の涙も、しばらくは止みそうにない。 【止まぬ雨に、"白いてるてる坊主"を並べて】
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