止まぬ雨に、白を並べて

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───堀越(ほりごえ) 晴志(はるじ)、二歳年上の彼は私の幼なじみであり恋人だ。 「は、はい。晴志さんこそまだ残っていたんですか?」 「ああ、調べものがあったから図書館にいたんだ」 凜美の問いかけに柔らかな笑みを浮かべながら晴志が辺りを見渡す。…これはもしや、絶好の機会なのでは。 「あ、あの晴志さん!」 「ん?」 「実はその…私、傘を忘れてしまって。よろしければご一緒させて欲しいなと」 頬をほんのりと染めながら凜美は両の人差し指を突く。 それを見た晴志は目を瞬かせ、ややあってこうもり傘を持つ手を凜美の方に小さく傾けた。 「もちろんどうぞ、淑女(レディ)」 「!」 彼を見上げれば晴志と目が合う。整った綺麗な顔とこちらを見つめる優しい視線が凜美の胸をじんわり熱くさせて何だかむず痒い。 「あ、ありがとう…ござい…ます…」 ちゃんと礼を言うはずが、急に甘酸っぱい感情が胸辺りからせり上がってきて途切れ途切れになってしまう。 しかし彼には十分だったようで笑みを浮かべながら「どういたしまして」と返し、二人は雨の中へ踏み出した。 「今日は教授が西洋医学について教えてくれたんだ。興味深い内容ばかりだったよ」 「西洋医学…私にはよく分かりませんが、とても素晴らしいものらしいですね」 「ああ、研究が進めばこの国の医学もきっとよくなる。とても楽しみだ」
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