止まぬ雨に、白を並べて

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「…雨足がさらに強くなってきたな。家まで送るから行こう」 「……はい」 止めた足を動かして雨の中を歩く。会話もなくただ二人並んで歩き続けた。彼の顔を見ることすら出来なくて、彼の表情は分からない。 ───まだ雨は止まないで、家に着かないで。 今はこのままでいさせて。 そんな思いも虚しく、あっという間に家へ着いてしまう。今までで一番早くて辛い帰り道だった。 ◆◇ 彼から留学の話を聞いて以来、頭の中で"留学"、"英国"、"二週間後"の単語が浮かんでは沈んでいく。 「これは晴志さんのためなんだ…私が邪魔しちゃいけない」 ───私は彼の夢を誰よりも応援しているのに、ここで大事な機会を壊してどうするの。ここは笑って見送らなきゃ。 必死に言い聞かせ、拳を握り締めると凜美は教室を出る。木造の廊下を歩きながら何気なく外へ目を向ければあの時と同じような強い雨が降っていた。 閉め忘れた窓からは雨の音と湿った土の匂いがする。 「ここ最近、雨ばかりだなあ…」 開いた窓に近づき、白黒に見える世界を仰ぐ。こうも雨の日が続くとあの澄んだ青色が恋しくなるものだ。 「…まるで私の心みたい」 生徒が行き交う廊下、凜美は誰にも聞こえないほど小さな声でぽつりと呟く。 その言葉は誰の耳に届くこともなく、やがて雨に溶けて白黒な世界と混ざった。
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