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◆◇
その後も雨の日は続いた。一度として途切れることのない雨は地面に数多くの水たまりを作って歩く場所を減らしていく。様々な花であふれるこの季節にここまで長い雨は珍しい。
「この調子じゃ明日は雨に濡れながらのお別れになっちゃうよ…」
晴志が渡航する日の前夜、自分の部屋で凜美は頬杖をついて考えていた。せっかくの大航海、晴天とはいかなくてもせめて晴れた空と笑顔で見送りたいものだ。
「そうだ!」
あることを思いついた彼女は立ち上がり、机の引き出しから数枚の紙と紐、を持ってくると手を動かす。
それから数分もせずに彼女の手から机へ何かがころりと落ちる。
それは彼女の手のひらほどの"てるてる坊主"だった。
「あとはこれを窓辺に吊り下げて…と。───よし、出来た!」
窓辺に下げたてるてる坊主を見て柔らかくはにかむ。これで明日は晴れるはずだ。
布団に潜り込み、凜美が目を閉じる。真っ暗な瞼の裏に彼の笑顔や姿が、並んで帰ったあの帰り道がぼんやりと浮かび上がって頬を一筋の涙が伝った。
───明日から、彼とはしばらく会えない。
『晴志さん、行かないで』
少し開いた口から零れそうになったその一言を凜美は飲み込んだ。
◆◇
「出発の日でさえ雨だなんて、オレは雨男なのかもしれないな。これが"名前負け"というものか」
当日の朝、凜美の家に来た晴志は眉を下げて困ったように笑った。
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