止まぬ雨に、白を並べて

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「……(てるてる坊主、作ったのに)」 彼の話を聞きながら凜美は窓辺のてるてる坊主へ目を向ける。昨晩に想いを込めて作ったてるてる坊主も力及ばず、今日も外は雨が降っていた。 彼曰く、それでも船は予定通り出航するとのことで、もうすぐ行かなければならないらしい。 「さて、オレはそろそろ行くかな」 「わ、私も港まで一緒に行きます」 立ち上がった晴志に遅れて凜美も立ち上がる。そして客間を出た二人は縁側を歩く。 「…ああ、すまない。帽子を忘れてしまったみたいだ」 ───しかし玄関の手前、その言葉とともに晴志が足を止めた。 「持ってくるからここで待っていてくれ」 「はい」 くるりと背を向けた彼が大股に近い歩幅で来た道を戻る。その一方で凜美は晴志の大きく凛々しい背中を見つめながらそっと胸を押さえたのだった。 ◆◇ 「行っちゃった…」 未だ雨が降る中、港から戻ってきた凜美は崩れ落ちるように畳の上へ座った。頭の中では船に乗り、笑顔でこちらへ手を振る晴志の姿が繰り返し流れている。 彼は、晴志さんは自分がどんなに泣いても喚いても届かないほど遠い場所へ向かったのだ。 だからこの国には、私の隣にはいない。 「うう…」 留学を喜ぶ気持ちと傍にいて欲しい気持ち、真反対の気持ちが彼女の中でせめぎ合ってまた涙が出そうになる。その涙を拭ってくれる大きな手もないというのに。 目じりに溜まりかけた涙を小さな手で拭って顔を上げた。潤んだ瞳に窓辺、吊り下げたてるてる坊主が映り込む。
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