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「っちゅーことでさ、凜子が家に寄りたいってんなら、俺、雨宮にはちゃんと一報入れるぜ?」
スマホに視線を投げながらそう言ってくれる奏芽さんに、私は「貴方のそう言うところが大好きなんです」ともう1度、心の中でつぶやく。
だって、まだ声に出しては言えない。
のぶちゃんにちゃんと話をしてからでないと――。
私、今感じているような素直な気持ち、一刻も早く、奏芽さんにちゃんと胸を張って言えるようになりたい。
そのためにも、のぶちゃんに自分から連絡をしないと。
そう、思ったの。
***
「なぁ凜子、聞いてる?」
奏芽さんに目の前でひらひらと手を振られて、ハッとする。
考え事に夢中になってしまって、彼の問いかけへの答えをちゃんと出来ていなかった。
「あ、あの……えっと……」
ソワソワと視線を泳がせたら、「別の事考えてただろ」って正鵠を射られてしまった。
また、「俺と一緒にいるのに他の男のこと?」って叱られるかと身構えた私に、「急かす様なこと言っちまったけど……焦って結論出す必要はないんだからな?」って予想に反した言葉が続く。
「え?」
思わず頓狂な声を出して奏芽さんを見つめたら、「生真面目な凜子のことだ。きっと俺への返事絡みであれこれ考えてんだろ?」って私をじっと見つめてくるの。
本当、この人には敵わない――。
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