私、どうしようもなく奏芽さんが

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(んー、何だかイマイチ……)  ふとそんなことを思ってから、私はすごく迷って髪を一旦ほどくと、右サイドに寄せてひとつ結びのゆるふわ編みのおさげに結い直した。  考えてみたら、ふたつ分け以外の髪型を奏芽(かなめ)さんに見せるのは初めてかもしれない。  ふたつ分けにしているよりはひとつにまとめたほうが大人っぽく見える気がする。するけれど、急に髪型を変えたりしたら、変に背伸びしてるみたいで滑稽じゃないかな。  そこでふと時計に目をやった私は、帰宅後10分以上が経過しているのに気が付いてヒヤリとする。  10分くらいで支度しますって約束したのに!  15分越えたら嘘になっちゃうっ!  慌ててオフホワイトのマクラメ編みのショルダーバッグにお財布とハンカチ、ポケットティッシュ、それからスマホを移すと、ベージュのパンプスを履いて家を飛び出した。  階段を転がるように駆け降りて、奏芽さんの待つ車まで走ったら、中から身を乗り出すようにして助手席のドアを押し開けてくれながら、奏芽さんが笑う。 「そんな急いでこなくても良かったんだぞ? 階段から落ちやしないかと冷や冷やしちまったじゃねぇか」  言って、うつむきがちに「凜子(りんこ)、反則……」と小声で付け足してくる。  一瞬何を言われたのか分からなくて奏芽さんをじっと見つめたら「髪型も服も似合ってる」って頭を撫でてくれた。
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