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私より6つ上の彼は、今や立派な社会人。
公立の小学校で先生をやっている彼――本間信昭――に憧れて、私は大学で学校の先生を目指して日夜勉学に励んでいると言っても過言ではない。
生活費の足しにしたくてアパート近くのコンビニでバイトはしているけれど、それ以外はちゃんと真面目に勉強しているの。
それもこれも、憧れの人の背中に少しでも近づきたかったから。
(のぶちゃん、あれから会えてないけど元気かな……)
とか考えていたら、眼前の最低男が、頬に触れていた手を髪に移動させてグイッとおさげを引っ張り上げてきた。
「痛いっ!」
未だ触れたままだった彼の手にギュッと力を込めて抗議の声を発したら、「凜子、今、別の男のこと考えてただろ?」って睨まれる。
私の何をそんなに気に入ってくれたのか分からないけれど、ひとつだけ言えることがある――。
「そんなのあなたには関係ないっ」
そもそも名前を呼び捨てにされる覚えなんてない。
「なぁ、今、凜子の前にいるのは誰だ?」
私の抗議なんて聞く耳を持たないみたいに、自分の言いたいことをガンガン押し付けてくる彼がすごく苦手。
嫌で嫌でたまらないのに、私は何故か気がつくといつも彼のペースに巻き込まれてしまっている。
「あなただけど……」
「名前」
あなた、と呼んだら再度おさげを引っ張られて名を呼べ、と要求された。
「と、鳥飼さん」
ちゃんと要求通り言ってあげたのに、盛大な溜め息をつかれた。
「凜子、鳥飼はうちの一族みんなの称号な? 俺は俺自身の名前を呼べって言ってんだけど?」
言われて、私はキョトンとしてしまった。
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