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え。うそ。どうしよう!
考えてみたら、のぶちゃんはうちを知っているんだった。
こんな風に直接訪ねてきてくれることだって想定の範囲内だったはずなのに、どうして思いもしなかったんだろう。
私は慌てて玄関のロックを外すと、扉を開ける。
「凜ちゃん、久しぶりだね。元気にしてた? ……って、あれ? もしかして……出かけようとしてた?」
背中に背負ったままの小ぶりのサッチェルバッグにふと視線を移されて、そう問いかけられてしまう。
「あ、うん。出かけようと……っていうか。えっと……。――のぶちゃんから連絡があったらすぐに出られるようにって支度してたの」
嘘をついても仕方ないので、連絡をもらったらこちらから出向こうとしていた旨も含めて素直に話した。
「そっか……」
言って、そんなに広くない玄関内に一歩足を踏み入れてきたのぶちゃんを、私はキョトンと見上げる。
「……のぶちゃん?」
聞いてなかったのかな?
のぶちゃんが兄妹という認識を越えてしまった今――。
そうして私がのぶちゃんを“憧れのお兄ちゃん”としてしか見ていないと気付かされてしまった今――。
「いくら幼なじみとはいえ、男女が部屋にふたり切りになるのは良くないと思って」って、私、ちゃんと伝えたはずなんだけどな?
距離を詰めてきたのぶちゃんが、いつもとは少し様子が違うように感じられて、私は何となく不安になる。
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