バイバイ、私の初恋の人

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 私の方へ近づいてきたのぶちゃんに押されるように半歩下がって彼を見上げたら、のぶちゃんの背後で玄関扉が乾いた音を立てて閉まって――。  それと同時に後ろ手でドアに施錠をするのぶちゃんを見て、ますます不安になる。 「あ、あのっ、でっ、出かけ……ないの?」  動揺していることを悟られたくなくて、努めて冷静な声を出したつもりだったのに、緊張して噛んでしまった。 「今日はね、車もちゃんと迷惑にならないところに停めてきたし、そこのコンビニでお弁当も買ってきたんだ。僕、仕事後で疲れてるし、出来たらアパート(ここ)で話したいな? ――ダメ?」  手に提げたビニール袋を軽く持ち上げて見せられて、私は言葉に詰まる。  家にのぶちゃんを上げるのはアウトだと、心が叫んでる。  だってのぶちゃん、私のこと、妹として見てない……んだよ、ね?  背中に嫌な汗が伝って、ゾクゾクする。私はそれを振り払うように生唾を飲み込んだ。 「さっきも言ったけど……へ、部屋にふたりきりは……その、余り良くないかなって」  狭い玄関先で押し問答みたいになるのは嬉しくない。でも……でも……。  そわそわと視線をさまよわせる私に、のぶちゃんがほぅっと吐息を落とした。 「ねぇ(りん)ちゃん、ひょっとして僕のこと、意識してくれてるの?」  その声にハッとして顔を上げたら、耳元に唇を寄せられて「男として――」ってささやかれた。  その声の生々しさに、私は思わず耳を押させてその場から飛びのく。 「あーあ、凜ちゃん。靴履いたまま部屋に上がったらダメでしょう?」  言われた言葉はもっともだけど、だったらそこを退いてもらえないかな。  のぶちゃんが三和土(たたき)に立ったままだと、私、靴を脱ぎに降りられないの。
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