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「凜ちゃんが僕に何を言いたいのか……さすがに分かってるつもりだよ。でも――、僕はまだその言葉を君の口から聞きたくないんだ。それを、察してくれない?」
切なげな顔をしてそう言って、再度私を抱きしめてくるのぶちゃんの身体が小さく震えている。それを感じて、私は彼を無理矢理振りほどくことが出来なくて固まってしまう。
「僕から連絡するって言ったのに――。どうしていつも、凜ちゃんは僕の気持ちなんてお構いなしに思いつきみたいに急に連絡してくるの?」
痛いぐらいにギュッと強く抱きしめられて、私は言葉に詰まった。
のぶちゃんが言うとおり。
私は前にのぶちゃんに連絡した時だって、自分の都合で彼を利用して振り回したの。
「……ごめ、なさ……っ」
そこはもう謝るしかない。
だってのぶちゃんの言う通りなんだもの。
でも――。
「でもね、のぶちゃん、私、やっぱりどんなに嫌だって言われても……この気持ちだけは今すぐのぶちゃんに伝えたいっ。伝えなきゃいけないのっ。――恨んでくれても構わないから、お願い、聞いて?」
私は一生懸命身じろいで、のぶちゃんの腕から逃れるようにほんの少し身体を離すと、彼の胸元に手をつっかえる様にして一生懸命言葉をつむいだ。
「私ね、好きな人が出来たのっ。だから……だからのぶちゃんの気持ちには応えられないっ! 本当にごめんなさいっ!」
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