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再度身じろいで、のぶちゃんの腕から完全に逃れて数歩離れると、私は勢いよく頭を下げた。
ギュッと結わえた1つ結びのおさげが、お辞儀に合わせて眼前に落ちて、私の表情を隠してくれる。
「そこまで……なの?」
ややして、のぶちゃんがポツンとつぶやくようにそう言って――。私はその声に恐る恐る顔を上げた。
「凜ちゃんの気持ち、もうそこまで、かっちり固まってしまっているの?」
私の目をじっと見つめて、のぶちゃんが再度問い直してきた。
私はのぶちゃんの視線を真正面からしっかり受け止めて、小さくうなずく。
「……はい」
そのままハッキリそう告げたら、のぶちゃんが小さく吐息を落として。
「そういう、1度こうだと決めたら頑として譲らないところ。……僕はね、凜ちゃんのそういうところが大好きなんだよ。――けど」
そこで私からふっと視線を逸らすと、
「けど、今回ばかりはその潔さが恨めしく感じられるね」
そう言って淡く微笑んだ。
「のぶ、ちゃん……」
その笑顔が余りにも悲しそうで、私は思わず彼に近付きそうになって、でもそれはしたらいけないんだ、って思いとどまったの。
私の決断がのぶちゃんを傷つけることは最初から分かっていたことだ。ここで変に優しさを出すのは、ルール違反だ。
「ごめんなさい」
のぶちゃんの気持ちに応えられなくて。ましてや、幼なじみとしてのお付き合いすら、今までのようにはいられないと線引きしてしまって――。
心の中でそういう言葉を付け加えながら、私はもう1度のぶちゃんに頭を下げた。
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