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「お弁当、ぐっちゃになっちゃったね」
しばらくして足元に落ちたビニール袋を拾い上げたのぶちゃんが、中身を確認して苦笑する。
「崩れちゃったけど、こっちの……凜ちゃんが好きな幕の内。もったいないし、もらってくれる……かな?」
ほんの少しおかずが寄ったり混ざり合ったりしてしまったお弁当を差し出されて、私は一瞬戸惑った。
これは受け取ってもいいの、かな?
その迷いを察してのぶちゃんが言い募る。
「さすがに僕もお弁当ふたつは無理だから。――お願い?」
言われて、確かにその通りだと思った私は、恐る恐る手を伸ばしてのぶちゃんからお弁当を受け取った。
「凜ちゃん、僕――。今すぐには無理かもしれないけれど……ちゃんと気持ちの整理をつけるから。そうしたら、さ。また、幼なじみのお兄さんとしての立ち位置くらいは……キープさせてもらえない、かな?」
お弁当を介して、のぶちゃんの手が小さく震えているのが分かって――。私は素直に「……うん」と返事をした。
「さっきはあんな言い方しちゃったけど……。困ったことがあったら……いつでも連絡しておいで? 僕は……凜ちゃんのこと、ふられたって、……ずっとずっと大切に思っているから――。ね?」
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