*余裕なんてあると本気で思ってんの?

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***  のぶちゃんの時みたいにインターホンのモニターを確認しないで玄関扉を開けたら、言われた通り奏芽(かなめ)さんが立っていて――。 「奏芽、さ……、っひゃ!?」  呼び掛けたと同時に、玄関内に大きく一歩足を踏み出してきた奏芽さんに、いきなりギュッと抱きすくめられた。 「あ、あのっ……」  奏芽さんの背後でバタン……と扉が閉まる音がして、私はその音でハッと我に返って小さく身じろぐ。 「凜子(りんこ)、チャンスやったのに、なんで正直に言わなかった?」  それを逃すつもりはないのだ、と言わんばかりに強く抱きしめ直されて、責めるような低い声音で問いかけられた私は、奏芽さんが今までここにのぶちゃんがいたことをのだ、と確信した。 「……ごめ、なさい」  小さくつぶやくようにそう告げたら、今度こそはっきりと舌打ちされて。 「あの男と……謝らなきゃなんねぇようなこと、したのかよっ?」  って顔を覗き込まれたの。  私は奏芽さんのその言葉に慌てて首を振る。 「し、して……な――、んんっ」  否定の言葉をつむごうとした声が半ばでさえぎられて、奏芽さんに唇を奪われたのだと気が付いた。  しかも――。
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