気のせい?

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「あ、あのっ」  言い淀む私に畳み掛けるように、 「ほら、最近時々くる向井さんのお友達の――えっとショートマッシュの明るい子……」  言って、そこで遠い目をする谷本くんに、「片山さん?」って聞いたら「そうそう、四季(しき)ちゃん!」って……。  え? 名前呼び?  一瞬驚いたけれど、四季ちゃんなら、周りからそう呼ばれるのを笑顔で推奨してしまう気がして、「そう、四季ちゃんです」と答えた。  四季ちゃんがどうしたんだろう?  不意に彼氏とのことから話題が変わったように思ってキョトンとしたら、「彼女がね、向井さんのところは君がハタチになるまでは……その……清らかなお付き合いだって言ってて……本当かな?って」と、谷本くんが照れたように鼻の頭を掻くの。 「清らか?」  無意識に彼の言葉を復唱してから、意味が分かった途端、一気に顔がブワッと熱くなった。  四季ちゃん!!  この場にいない彼女の頬を思わずギューッとつねりたくなって、私はフルフルと身体を震わせる。 「その様子だと……本当っぽいね」  マジかーと谷本くんがつぶやくのへ、私は思わず「せ、セクハラですっ」と返してしまった。  だって……だって……そんなっ。
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