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「凜子」
再度促されて、やっと――。
恐る恐る「奏芽さんが私以外の女の子にチヤホヤされるの、イヤです」って本心を言ったの。
目に見えない相手にまで嫉妬するとか、私、何て醜くいんだろうって泣きそうになりながら。
「バーカ。頼まれてももうそんな馬鹿なことはしねぇよ。凜子以外にモテても嬉しくねぇし」
そこまで言って「あ……」とつぶやくと「けど、チビどもに聴かせてやるのだけは許してくんね?」って眉根を寄せるの。
小児科で、子供たちにピアノを聴かせてあげたり、あとは姪っ子さんに聴かせてあげたり、そういうのは許して欲しいって真剣な顔をする奏芽さんに、私はいつの間にかモヤモヤした気持ちが消えていた。
「……仕方ないですね。じゃあ、そこだけは許してあげます」
涙目で奏芽さんを見上げながらわざと偉そうにそう言ったら、「あー、くそっ。可愛すぎるわ」って抱きしめられて……耳元で小さく「あんま、煽んないでくれる?」って切なげにこぼされた。
「俺はいつだって理性を総動員して凜子に手、出さねぇように気ぃ付けてんだから……そんな女の目で俺を見つめてくれるな」
とか。
女の目ってなんだろう?
奏芽さんが好きで好きで堪らないって視線なら……ごめんなさい、私、抑えられそうにないです。
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