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「谷本くん?」
その様子が何だか心をざわつかせて、思わず呼びかけたら「いや、俺の気のせいかもしれないんだけど、一瞬だけ見えたあの人の横顔、すっごい笑って見えたんだよね。それが何か不気味で気になっちゃって……向井さんに声かけたんだけど――」とか。
谷本くんのその言葉に、私は言いようのない不安にかられてゾクッとしてしまった。
「笑ってらしたのって、見間違いとかじゃ……」
ややして自分が安心したくてそう言ったら「うん、そうかもしれないし、そうだといいなって思うんだけど……やっぱり気味悪いし、一応気をつけて。――取り急ぎ今日は帰り、お迎えある?」
心底心配そうに聞かれて、私は小さくうなずいた。
「あ、はい。大丈夫です」
奏芽さんがバイトの終わりの時間を聞いてきてくれたから、多分。
***
〝駐車場で待ってる〟
21時過ぎに予定通りバイトを終えて携帯を確認したら、奏芽さんからメッセージが入っていた。
言われなくても駐車場に彼の車が入ってきたの、店内から見て知ってる。
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