転ばぬ先の杖?

7/10
前へ
/615ページ
次へ
 ソワソワとそんなことを思いながら、四季(しき)ちゃんに「奏芽(かなめ)さんが四季ちゃんと話したいって……」とスマホを差し出したら、四季ちゃんが目をパチクリさせた。 「え? 私っ?」  うん、私が四季ちゃんでもきっと、何で?って思う。  私自身も困惑気味なままうなずくと、四季ちゃんが小さく深呼吸をして「――もしもし?」と電話に出た。  そのまま奏芽さんと何事かを話している四季ちゃんを、私は落ち着かない気持ちで眺める。  奏芽さん、四季ちゃんと何を話しているのかな?  電話でさえも、彼が違う女の子と話していると思うと、何だか気持ちがざわついてしまうとか、私も大概ヤキモチ妬きだ。  ましてや現状、2人はきっと“私のために”話してくれているのに。 「はい、分かりました。じゃあ放課後はその方たちがいらっしゃるまで私、凜子(りんこ)ちゃんのそばにいます」  四季ちゃんが、奏芽さんからの言葉にうなずいて。  私は四季ちゃんから自分の名前が出て、思わず彼女をじっと見つめた。  何の話だろう?  “その方たち”ってことは……奏芽さんじゃない誰かが来る?  ん?  どういう意味?  疑問符満載で四季ちゃんを見つめていたら「鳥飼(とりかい)さん、もう1回凜子ちゃんと話したいって」ってスマホを手渡される。  私はよく分からないままに電話を受け取って。  奏芽さんから低くてよく通る声で告げられた言葉に、瞳を見開いた。
/615ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1547人が本棚に入れています
本棚に追加