隣、いい?

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 四季(しき)ちゃんと別れての授業。  いつもなら何て事のない一人での受講が、何だか今日は少し不安で。  せめても……と思って、いつもは真ん中より少し後方あたりの席を選ぶところを、今日は教授に近い場所に、と教壇に近い席――前から2列目を陣取ってみた。  ここは劇場(シアター)のように教壇に対して放射線状に席が配置されている大型の教室で、後方に行くに従って階段を上がって行くように席の位置が高くなっていっている。  どこに座っても、ちゃんと講義内容が分かるように大型モニターに教授の姿やホワイトボードなどが映し出されるし、教授の声もマイクを通して教室のあちこちに配されたスピーカーから聞こえてくるの。  だからかな。  比較的後ろの席に人気があって、いつも後方から埋まるように席がまばらに埋まっている印象。もちろん今日も。  私みたいに前の方に詰めて座る生徒は逆に目立つのだけれど。  あれ? 珍しいな。  私と同じ列、ほんの数席離れたところに今日は見慣れない男の人が座ってきた。 ***  教室内はちゃんと冷暖房完備で、この部屋も割と温かくしてある。それでも何となく足元が寒い気がした私は、鞄からいつも持ち歩いている膝掛けを取り出して足に載せた。  そんなに音を立てて動いたつもりはなかったけれど、衣擦れの音が耳障りだったのかな?  先刻の男性が私の方をジッと見てきて――。
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