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「――イヤッ!」
私は思わずその手を、掴まれていない方の手で振り払ってから“やりすぎた!?”って動きを止める。
でも……そんなに親しくない人――それも異性――にいきなり触れられるとか……私、慣れてないし、何より好まないんだもん。
「ご、ごめんなさい、つい」
それでも、叩いちゃうとか……今のはやっぱり過剰反応だったかもしれない。
そう思って小声で謝ったら「あ、いや……僕の方こそ不用意に触ってしまってごめんね」って素直に謝罪してくれて、肩の力が抜けた。
でも、次の瞬間には
「けどさ、僕、本当にテキストを見せてもらえるような友人がいないんだ。頼むよ」
って、また手を伸ばしてきて――。
私は慌てて身体をひねってその手を避ける。
この人は言動が読めない。
というか、色々ちぐはぐな気がして……何だか近くにいるだけで、居心地が悪くてそわそわする。
奏芽さんも初対面の時から割と強引だったけど……言動に一貫性があったからかな。こういう気持ちの悪さは感じなかった。
「あの、でも私……」
それで何とかお断りしようと思ったのだけど、相手は全然引き下がってくれなくて。
今ほど、この場に四季ちゃんがいない事、奏芽さんがいてくれない事を心細く思った事はない。
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