隣、いい?

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 な、んで……私の名前!? それに、「またね」って、何!?  あまりの衝撃に思わず振り返ったら、その人は席を移動することなく、帽子を被って教室を出て行くところで。  私が断ったから……講義を受けること自体を諦めてしまったの?  それとも――。  もしかして最初から授業なんて受ける気なかったんじゃ?  立ち去って行く男性の後ろ姿を呆然と見送りながら、何だかその帽子姿に既視感を覚えて、私はフルフルと首を振って胸にわだかまる気持ちの悪さを振り払った。  きっと名前を呼ばれたのは……奏芽(かなめ)さんみたいに私のノートとか(持ちもの)に書かれた名前を見られただけ。  「また」も、同じ講義をとっているからって意味で、もっと言えば同じ大学に在学中と言う意味で……、きっと他意なんてない。  半ば強引にそう思って、自分を納得させる。  不意に立ち上がって足元に落ちてしまった膝掛けを拾い上げながら、それでも拭いきれない不安が胸の中に黒い染みを広げて行くのを感じずにはいられなかった。  どうしよう。今、私、ものすごく奏芽(かなめ)さんに……会いたい。
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