知らないけど知ってる人

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 その声に期せずして肩を少し跳ねさせてしまってから、そろそろと視線をあげると、四季(しき)ちゃんだった。 「四季ちゃんっ」  彼女の登場に心底ホッとして、それが顔と声に出てしまったんだと思う。 「もしかして……離れてる間に何かあったの!?」  すぐにそう聞かれてしまった。 「あ……。えっと。大したことではないんだけど」  そう前置きをして先の講義が始まる前にあったことを話したら、「それ、めちゃくちゃ大したことだよ!」って叱られてしまった。    とりあえず次の教室に移動しながら話そうってことになって、四季ちゃんと並んで歩きながら、ポツポツと自分が感じた違和感も交えて起こった出来事を話していたら、少しずつ自分の中でも心の整理ができてくるようで。 「凜子(りんこ)ちゃん、その男、知ってる人だった?」  四季ちゃんに問いかけられて、私は小さく首を振る。  そういえば、向こうは私の名前を知っているみたいだったけど、私は彼の顔を見てもクラスメイトという認識にならなかったし、当然名前も思い浮かばなかった。あちらから自己紹介も受けていなければ、こちらから聞くような真似もしなかった。  それを伝えると、「何それ。あっちだけ凜子ちゃんのことを知ってるとか……ますます気持ち悪いね。けど、こっちが相手に興味を持ってるって思われるのは危なそうだし、凜子ちゃんから名前を聞かなかったのは正解だと思う!」って四季ちゃんが眉根を寄せてまくし立てる。  私のことなのに、まるで自分のことみたいに考えてくれる四季ちゃんの存在が、本当にありがたいって思ったの。  そこでふと、私はあることを思い出した。
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