知らないけど知ってる人

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「あ、でもね、四季(しき)ちゃん。私、その人のこと、どこかで見たことがある気もして――」  言ったら、「え!? どこで!?」って詰め寄られる。  私は四季ちゃんの迫力に、しばし自分の記憶を手繰り寄せながら考える。  彼に既視感を覚えたのは……あの人が教室を出て行った際。帽子を被った後ろ姿を目にした時、だ。  そんな姿の男性を目にしたのは……確か。 「多分……バイト先のコンビニ」  ゴミ箱のところで声をかけてきた、あの人の後ろ姿に似ている気がしたんだ。  口調とか雰囲気なんかが合致しなくてすぐにはピンとこなかったけど、あの後ろ姿だけは同一人物にしか思えなくて。  そう答えたら、四季(しき)ちゃんが驚いたように瞳を見開いた。 「ちょっと! それ、すっごくマズイじゃん! だって凜子(りんこ)ちゃん、今まで変な気配、コンビニとアパート付近でしか感じたことなかったんでしょう? しかもつけてくる気配の方は姿、見たことないって話だったよね? けど、もしその気配の主がバイト先や大学で凜子ちゃんの前に姿を現し始めたのかも?ってなると」  四季ちゃんが私の手をギュッと握る。 「凜子ちゃん、そいつ、もう隠れなくてもいいって思い始めたってことかもしれない。――ここまで凜子ちゃんの行く先々で気配を感じるようになったってことは……多分、知らないうちに後とかつけられたり……してたんだと思うし、下手したら凜子ちゃんの行動パターンとか把握してるのかも!」  だから私が四季ちゃんと離れて1人で受けるさっきの講義を狙われた?  四季ちゃんの言葉に、私は全身が粟立つのを感じた。
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