1547人が本棚に入れています
本棚に追加
四季ちゃんに、「凜子ちゃん?」ってそっと腕に触れられて、ハッとしたの。
それで初めて、自分がすごく神妙な顔をして固まってしまっていたことに気が付いた。
「大丈夫だよ。私、お迎えの人たちと出会えるまでついてるから」
――もし、待ち人に会えなかったとしても、そのときは私が彼氏に頼んでバイト先まで連れて行ってあげる!
四季ちゃんがそう言ってくれて、私はやっと肩から力を抜くことが出来て。
「四季ちゃん、有難う」
言ったら、「水臭いこと言わないの!」ってにっこりされた。
奏芽さんと正門付近で騒いだことがご縁で出来たかけがえのないお友達。
大事にしなきゃって思った。
***
「あ、あの……。向井……凜子さん?」
と、背後から不意に声を掛けられて、私は思わず「あ、はいっ」って答えて身体を跳ねさせる。
振り返ると、奏芽さんによく似た顔立ち――でも目はシャープな印象の奏芽さんと違って、愛らしい様相のぱっちり二重――の、おさげ姿の女性が、小学生くらいの女の子と一緒に立っていた。
髪の色は少し赤みがかかって見えて……私と同じブリュネットに近い、かな?
身長は私と同じくらいだと思う。でも、身にまとった雰囲気がハムスターとかリスとか……とにかくそんな感じの小動物系で、何だか私よりも小柄に見える気がしたの。
年上なはずなんだけど、なんて言うのかな。思わずギュッ!ってしたくなるような可愛さというか。
そんな彼女とは、一度だけ奏芽さんとスーパーでお買い物をしていた時にお会いしたことがある。
最初のコメントを投稿しよう!