知らないけど知ってる人

10/17
前へ
/615ページ
次へ
「あっ、後ろから急に声掛けてごめんなさい。霧島(きりしま)音芽(おとめ)です。鳥飼(とりかい)奏芽(かなめ)の妹の」  前に一度お会いしましたよね?と言われるまでもなく、彼女――音芽さん――のことは私も覚えている。  見た目から、奏芽さんの血縁者なことは容易に推測できる、でも奏芽さんとは全く身に纏う(おもむき)の違う妹さん。  それに、何より私、音芽さんの横に立つ女の子とも面識があるの。その少女のことは、ある意味音芽さんより印象に残っているかもしれないくらいで。 「奏芽がどうしてもって言うから、和音(かずね)、あなたの事、見つけるお手伝いに来てあげたのよ。パパはお姉さんとは会ったことないし、ママもぼんやりしててあてにならないところがあるから」  ツンとした様子で私を睨みつけてくるその女の子。うん。私も彼女のことはよく覚えてる。奏芽さんの姪っ子の和音(かずね)ちゃんだ。  そっか。音芽さんと和音(かずね)ちゃんが一緒だから……。だからハルさん(相手)には私が分かるって。  奏芽さん、最初からそう言ってくれればいいのに「ハルたちが迎えに行くから」としか言ってくれなかったから。  単純に考えたら「たち」に奥様やお嬢さんが含まれているのは容易に推測ができたはずなのに、私の頭はパニックでうまく回っていなかったのかな。  私、ハルさんと音芽さんが夫婦だということは知っていて、そのお嬢さんが奏芽さんの姪っ子の和音(かずね)ちゃんだということも知っていたはずなのに、頭の中で全然それが繋がっていなかった。
/615ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1547人が本棚に入れています
本棚に追加