1547人が本棚に入れています
本棚に追加
「和音、失礼な物言いしないの! そんな喋り方する子は、奏芽お兄ちゃんに嫌われちゃうよ?」
音芽さん――お母さん――の言葉に、和音ちゃんはビクッと身体を跳ねさせると「ヤダ!」って即答して。
「お姉さん、ごめんなさい! 奏芽には言わないで?」
ってしゅん、とするの。すごく可愛いなって思ってしまった。
私は、そんな和音ちゃんに「言わないよ?」って約束したの。
***
「あの、私たち、鳥飼さんから赤のソリオでお迎えがあるって聞いてたんですけど」
不意に、すぐ横から四季ちゃんの声がして、私はそういえば、って思う。
「あ、ごめんなさい。温和……、あ、えっと、主人が……。大学前に横付けは恥ずかしいって言うものですから」
言って、音芽さんが指差す先。少し離れた路肩に、赤い車が停車しているのが見えた。
「兄のことだからきっと、いつもこの辺に堂々と横付けして迎えに来てたんだと思うんですけど……うちの人はそういうのダメなタイプで。本当ごめんなさい」
言われて、私も四季ちゃんも逆に恐縮してしまう。
「あ、いえっ。その反応、普通だと思いますっ」
四季ちゃんはそう言ってから、ハッとした様に「あっ! お兄さんが変っていうわけではなくてっ」としどろもどろになる。
私は四季ちゃんのそんな姿を見たのが初めてで、ちょっぴり驚かされてしまった。
「いえいえ。兄が図太すぎるんです、きっと」
音芽さんがそんな四季ちゃんの緊張をほぐすようにニコッと笑ってくれて、四季ちゃんもホッとしたように肩の力を抜く。
最初のコメントを投稿しよう!