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「あ、四季ちゃんっ!」
私はまだ、四季ちゃんにちゃんとお礼を言えていない。
「有難う!」
手を口に当てて、大きめの声で言ったら、立ち止まった四季ちゃんが、こちらを振り返って目をまん丸にした。
「凜子ちゃんが大きな声出すの、私、初めて見たかも!」
ニコッと笑われて、私はハッとして真っ赤になる。
言われてみれば、その通りだった。
だって私、いつも目立たないようにして暮らしてきたから。自分でも、自分の変化に少し驚いてしまった。
***
「お邪魔します」
音芽さんに助手席に乗るように促されて。
「あ、あの……」
でもそこは、何だか音芽さんのための場所な気がして、私は思わず躊躇ってしまう。
私が音芽さんの立場だとして、好きな人の横――助手席を他の女性に譲りたいだろうか?って考えたら少し嫌だなとか思ってしまって。
音芽さんは嫌じゃない……のかな?
それとも私が嫉妬深いだけ?
「はい?」
ソワソワする私の顔を、キョトンとした顔で音芽さんが見つめてくる。
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