1547人が本棚に入れています
本棚に追加
「わ、私、助手席で大丈夫でしょうか?」
思い切って聞いたら「え?」と聞き返されてしまって。意識しすぎ?とにわかに恥ずかしくなる。
「ああ! 大丈夫! 気にしないで?」
言ってから、「温和、いいよね?」と運転席のご主人に言い聞かせるような口調。
これは……既婚者の余裕というやつかしら。
なんて思った私だったけど、ふと視線を転じた先、ご主人の雰囲気に「おや?」と思う。
もしかして……隣に好きな人以外を座らせたくないのは音芽さんじゃなくて……。
そう思い至ってじっと運転席のスーツ姿の男性――奏芽さんとは別の意味で、正統派な感じのハンサムな男性だ――を見つめた。
彼、絶対めちゃくちゃムスッとしている、よね。
と、私の視線に気づいたご主人――温和さん?――が、こちらを見るなり嘘みたいにニコッと笑った。
年齢は確か、奏芽さんと……同い年、だったよね?
“温和”だから奏芽さん、「ハル」って呼んでおられるのねって思いつつ。
「奏芽の彼女って言うから、どんな女性が来るのかと構えてたんですけど。すごくお綺麗な方で安心しました。初めまして。奏芽の幼馴染みの霧島温和といいます。あなたみたいな愛らしい方に隣に座っていただけるとか、とても光栄です」
何だかわざとらしいくらい褒め殺された気がする。
「初めまして。今日はわざわざすみません。その……よ、よろしくお願いします」
言いながら、そっと音芽さんを窺い見たら、ムッとした表情をしてて。
ひゃー、これ、音芽さん、絶対怒ってるっ。
最初のコメントを投稿しよう!