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ふとその先を考えて、私は恥ずかしさに真っ赤になった。
は、二十歳になったら……私……奏芽さんと……。
散々、「凜子早く二十歳になれ」と耳元でささやかれ続けた身体は、条件反射のように二十歳という言葉に過剰反応するようになってしまっていた。
もしかして、これも奏芽さんの計算だったりするんだろうか。
だとしたら、思惑通りですっ。
***
あれから大学にも、バイト先にも、もっと言うとこうしたどこかへの行き帰りの道すがらでも、変な気配はしなくなっていた。
あれっきりあの帽子を被った男性にも出会わないし、もろもろ全て私の気のせいだったのかな?と思ったりしてて。
ふとスマホに視線を落として「バスの時間!」と慌てた私は、小走りに通い慣れたバス停までの道を走った。
そうしながら、奏芽さんと一悶着あった時も、こんな風に通学を急いでいたときだったなぁって思い出してクスッとしてしまう。
あの頃の私には、まさかあの“大嫌いだと思っていた彼”と付き合うことになるなんていう未来、見えていなかったはずだ。
あんなに顔を見るのも嫌だったはずの奏芽さんに、今はほんの少しでもいいから会いたいって思ってしまってる。
人生って、どこで何があるか分からないなってつくづく思った。
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