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「奏芽さん、名探偵になれそうです!」
思ったままを言葉にしたら、フッと小さく笑われてしまった。
「俺、今の仕事気に入ってっからな。いくら凜子に勧められても転職は無理だぜ?」
って。
「す、勧めてなんかっ」
慌てて言ったら「分かってて揶揄ってんのに相変わらず真面目だな、凜子は」と、ますます笑われてしまった。
***
「ところで凜子。誕生日、4月15日で合ってる?」
気持ちを切り替えるみたいに話を変えられたのは、ちょうど大学とアパートとの中間辺りにある信号に引っ掛かったとき。
私の今年の誕生日は土曜日で、奏芽さんの勤め先の小児科は、午前中のみの診療になっている日だ。
もちろん、私も土日は大学がお休みで。
「はい」
合ってます、と付け加えてから、何だか誕生日になったら二十歳だよな?って確認されている気分になって、そんなこと一言も言われていないのに顔が火照るのを感じてしまう。
あーん、私! 何考えてんのよ、恥ずかしい。
「ちょうどその日は俺も午後から休みだし――」
スマホでカレンダーをちらりと確認するなりそこまで言って、私の赤面に気付いたらしい奏芽さんがニヤリとする。
「凜子、なに考えてんの?」
「――っ!! なっ、何もっ」
慌てて頬を覆い隠すようにしてそう告げたけれど、勘のいい奏芽さんのことだもの。分かってて言ってるに違いないの。
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