第一印象は最悪で

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 私が最も苦手とするタイプの男女だな、あまり関わりたくないな、と思いながら目の前の仕事をこなしていく。 「温め、どうなさいますか?」  レジを通したお弁当を手に、眼前の30代ぐらいの男性に聞いたら、「お願いします」と言われた。  その声に「かしこまりした」と答えてクルリと店内に背を向けると、電子レンジにお弁当をセットする。  外装に書かれたワット数と加熱時間を確認して温めスタート。  いま、視界からは2人の姿は消えているはずなのに、女性の甲高い声だけはしっかり聞き取れていて。  それが何だか無性に心をざわつかせる。 「ねぇ鳥飼(とりかい)先生ぇ、ついでに飲み物も買っていーい?」  1度深呼吸をしてお客さんの方へ向き直ると、他の商品をレジに通して袋詰めをしながら電子レンジが鳴るのを待つ。  チラッと白衣姿の男性のほうを見たら、適当にあれこれカゴに放り込んでいた。  先生、と呼ばれていたから、どうやらどこかのお医者さんみたい。  そんなにくっ付かなくて良くない? 歩きにくくない?  思わずそう突っ込みたくなるほど、女性は鳥飼先生とやらに密着していて。  女の武器を最大限に使っているその姿に感心すると同時に、私には絶対無理!とか思ってしまう。  ピィーという電子音がして、私は急いでお弁当を取り出すと、用意していた袋に入れる。 「おまたせしました」  ニコッと微笑んで30代男性に手渡してから、「ありがとうございました。またお越しくださいませ」と定型句を告げて一区切り完了。
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