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「足枷の鍵も僕が持ってるからね。――あ、でも安心して? 服を着替える時には外してあげる」
この人は一体何を言っているんだろう?
「あ、あの……、私、家に……」
眉根を寄せて眼前の男性を見つめたら、
「ねぇ、僕のことは明真 って呼んで? 僕はそうだな。キミのことは“凜”って呼ぶことにしよっかな」
言いながらクスクス笑って、
「ホントは凜子って、ちゃんと呼んであげたいんだけどね、あの金髪男がそう呼んでるみたいだし、奴と同じ呼び方っていうのは芸がない上に胸糞悪いでしょ?」
とか。
この男は私の話なんて全然聞いてくれていないし、そもそも話が通じる相手ではないって確信させられた。
それでも私、言わずにはいられない。
「あ、明、真 ……さん、私、家に帰りたい……です」
――ここには着替えも何もないですし。
窺うように彼を見つめて付け加えたら「あー、服」ってハッとした様につぶやいて。
その反応に、これで少しは現状が打開できるかもって思ったのに……。
「気付かなくてごめんね? 後で僕好みの服、たくさん買ってきてあげる」
って言って私の頬を撫でるの。
その感触にゾクッと悪寒が走って、私は慌てて顔を背けた。
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