第一印象は最悪で

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「あ、は、はい」  でも、彼は一応お客さんなので、これしきのことで邪険にもできないし。 「よろしくね、向井。俺、この近所のビルで小児科医やってる鳥飼(とりかい)奏芽(かなめ)。ここには結構頻繁に買い物に来てるから、また会えると思うよ? 覚えといて?」  なぜそこで自己紹介!?  チャラ男の思考回路はやはりさっぱり分からないです。  さっき知ったばかりの私の名前を馴れ馴れしくも「向井」とか言ってきてるのもゾワッてするほど私とは相入れない。 「……は、はい……」  なんて応じるのが――というよりかわすのが――正解なのか分からなくて、私は気のない返事を返してしまう。  カゴの中の商品をひとつずつレジに通しながら、頭の中はどうしたものかという悩ましさにフル回転だ。  口ぶりからすると、彼はどうもこのコンビニの常連さんみたいだ。  だとしたら揉めるのは得策ではないし、今後も会う可能性が高いことを思うと、出来れば穏便にお帰りいただきたい。  一番の良策は……やっぱり少しでも早く会計を済ませてもらって帰ってもらうこと、だよね?  そう結論に達したのに!  なんでこの人のカゴの中、こんなにてんこ盛りなのー!?
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