第一印象は最悪で

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 無心にレジをこなしてこなしてこなして……小さな小箱をレジに通したところで「あ、それ」と声がかかった。  今度は何ですか!?  そう睨みつけたいのをグッとこらえて 「はい?」  と問いかけると、彼が私の手にした箱を指差してくる。  手元をよく見ずに作業をしていた私は、自分が手にした商品が何なのか把握していなかった。  きょとんとした顔で、馴れ馴れしくて迷惑な彼を見上げたら「目隠しとかいらないから」って何のこと? 「え?」  って声とともに手にした箱をまじまじと見て、私は思わずそれを投げ捨てたくなった。  こ、これっ。す、す、す……スキ……ンっ!? 「おっ、その反応。向井ちゃんはそれが何か知ってるんだ」  ニヤリとされて、私は真っ赤な顔で彼を睨みつける。  そ、そのぐらい私だって知ってます!  何に使うのかだって……その……い、一応っ。  ご縁がなくて実際に使ってるのとか見たことはないですけど!!  そこで谷本くんのレジで会計を済ませた女性がやってきて「鳥飼(とりかい)センセ、まだぁ?」と彼に腕を絡めて。  私は手にした箱と二人を見て、妙な生々しさを感じて即刻この場から立ち去りたい衝動に駆られた。  ダメダメ。  こんなことでいちいち動揺していたら仕事にならないわ。無にならないとっ。
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