本当に来るんだ

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「ね、向井ちゃん、そろそろさぁ、下の名前教えてくれてもいいんじゃね?」  顔を合わせた回数がトータルで10回目を越えた頃くらいから、しきりに鳥飼(とりかい)さんのフルネーム教えろ攻撃が始まった。  前一緒に来ていた彼女さん?のことは苗字で呼んでたじゃない。私もそれで構いませんことよ?  っていうかもっと言うと「店員さん」で構わないとすら思っているの。 「エディでのお支払いでよろしいですか?」  いつものようにスマホをレジにかざす鳥飼さんに、事務的対応のみで返す。 「おーい、向井ちゃん、無視?」  シャラーンという決済完了の音声を確認してから、商品を手渡す。  無視?と言う鳥飼さんの言葉さえもスルーしてペコッと頭を下げると、「有難うございました。またお越しくださいませ」と定型句を告げて、心のシャッターを下ろす。  よし、苦痛タイム終了!  心の中でそう思ったんだけど――。  運悪く今日は鳥飼さんの後ろにも谷本くん側のレジにも誰も並んでいなくて。  チラッとそれを確認した鳥飼さんに、珍しく食い下がられてしまった。
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