本当に来るんだ

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「向井ちゃんってばホントつれないよね」  言われて、私ははぁーっと溜め息をついてから彼を睨みつける。 「仕事中ですので」  言うと、「分かった。じゃあさ、バイト終わったら少し時間ちょうだいよ」って……ご冗談を! 「お断りします」  帰って勉強もしないといけないし!  心の中でそう付け加えてから、冷ややかな目で鳥飼(とりかい)さんを見つめる。 「私の何をそんなに気に入ってくださったのかは分かりかねますが、私、遊びに割く時間とかホントないので」  言ってて自分でも虚しいな、って思ったけれど真実だから仕方ない。 「なに? 俺がキミを気に入った理由が分かんないから線引きしてんの? ホント可愛いなぁ、向井ちゃんは♡」  いや、そうではなく!  重要なのは前半じゃなくて後半! 貴方に付き合ってるような時間的ゆとりはないですよ?って部分なんですが?  どうも彼との会話はちぐはぐになりやすい。  私の言い方が婉曲的でダメなのかな。 「そこはどうでもいいんです! 時間がないって方を拾ってもらえますか?」  溜め息混じりにそう言ったら、「何言ってんの、向井ちゃん。時間なんて何とかやり繰りして作るもんだぜ?」ってお説教ですか?  仕事中だけど……。この人お客さんだけど……。ついでに言うと常連さんだけど……。「あっち行け、しっしっ!」ってしてもいいですか? 何なら塩も投げつけたいですっ!
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