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覚悟してベッドの上に座っていたはずなのに、奏芽さんを見た途端、何だか恥ずかしくなって……。
うつむいたまま動けずにいたら、
「な、凜子。お願いだからこっち向いて?」
私の様子を窺うみたいに、顔にかかる後れ毛を指先でそっとよけられた。
その感触がくすぐったくて、私は小さく身体をすくませる。
そうしてその指先に促されるまま、ゆっくりと奏芽さんの方を向いたら――。
「――!!」
思いのほかすぐそばに、バスローブから覗く奏芽さんの胸元があって、今更のように「いよいよなんだ」と自覚させられてしまった。
「緊張……してる?」
言ってすぐ、「しないわけないよな」とつぶやいた奏芽さんの声に、私は思わず髪に触れたままの彼の手を取る。
「すっ、すごく緊張してます……。でも……それと同じくらい、……その……き、期待も……しています」
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