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私の声に、奏芽さんが体勢はそのままに耳を澄ませてくれているのが分かる。
私は身体の中に奏芽さんの指の気配を感じながら、半ば意図的に下腹部にキュゥッと力を入れた。
まるで身の内に留まる奏芽さんを離したくないみたいに。
実際そうなんだからそ少しばかり恥ずかしいけれど、思惑がバレてもいいって思ったの。
そこに力を入れることで、奏芽さんがどう感じるのかは、経験値不足の私には分からない。
でも、私自身は奏芽さんの指の質量をより強く感じてしまって、本音を言うと音を上げてしまいたいくらい居た堪れなくて。
だけど……いま私に触れているのは奏芽さんなんだと意識すると、強い異物感に戸惑いながらも不思議と怖くはなかった。
「私、初めては……奏芽さんじゃないと……イヤです。だから……」
奏芽さんの顔を見るのが恥ずかしくて、彼にしがみついたままポツポツと言葉をつむぐ。
「――変な……人に奪われる前に……お願い。私を奏芽さんのものに、して……ください」
私が外を出歩くのが怖くて堪らないと思ってしまう根底にあるもの。
それは金里明真に無理矢理犯されそうになったからじゃないかと気がついて。
いつかまた、同じように知らない男性に力尽くで押さえつけられてしまうのではないかと思ったら……。
そんなことそうそう有り得ないことだと頭では分かっているのに、どうしても足がすくんでひとりで出歩くことが出来ないの。
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