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脱衣所に入るなり、そっと床に降ろされた私は思いのほか足に力が入らなくてふらついてしまう。
「ひゃっ」
小さく悲鳴をあげてよろめいた私を、奏芽さんがギュッと支えてくださって。
その弾みに包まっていた布団がはらりと身体からほどけてしまった。
「あ……っ」
小さくつぶやいて布団に手を伸ばそうとしたら、役立たずの足が私を支えきれずにその場に崩折れそうになる。
「危ねっ」
奏芽さんがギュッと力を込めて私の身体を抱きしめてくださって転倒はしなかったものの、肌が密着しまくって照れてしまう。
「どうせ風呂には持って入れねぇんだし、もうこのままでいいだろ?」
奏芽さんが私のおさげをくるくると指先に絡めながら喉の奥で楽しそうに笑っていらして。
行儀悪くも布団を巻きつけたまま浴槽まで入りたいぐらいの勢いだった私としては「はい、そうですね」とはいかないのです、奏芽さんっ。
「せ、せめてタオルをっ」
脱衣所の棚に畳まれたまっさらなバスタオルに視線を投げ掛けて言えば、「ダァ〜メ!」と笑いながら却下されてしまった。
「奏芽さん、意地悪です」
こんな明るいところで裸で抱き合ってるとか……恥ずかし過ぎて蒸発してしまいそうです。
真っ赤になりながら涙目で奏芽さんを見上げたら、「ヤバイな、凜子。そんな顔されたらまたしたくなっちまう」とか……。
わ、私も一応もう経験者です。
何を?とか野暮なことはお聞きしませんし、お腹にあたってる固いのが何なのかも、確認したりはいたしませんっ!
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