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奏芽さんの唇が私の肌に寄せられるたび、ちくりと微かな痛みが走る。
奏芽さんは私の肌に小さな赤い鬱血の痕を散りばめながら、私の身体に傷などがついていないかも見ていらっしゃるみたいで――。
「ココ、結構無理させたし……怪我してないか診察してもいい?」
以前、次にお医者様にかかるようなことがあったら、自分に診察させて欲しいと言われたことがある。
けれど、それは風邪とかひいた時の話だと思っていて。
だって奏芽さんは小児科医だし、よもや診察するにしても内科のほうだと思うじゃない。
でも、いま奏芽さんが「診たい」と言っているのはそっちの方面ではなくて……どう考えても婦人科の領域だと思うの。
「かな、め、さんはっ、産婦人科医じゃ……ないです、よねっ?」
必死に膝を閉じながらそう言ったら、「何? じゃあ産婦人科医だったらOKなわけ?」とどこか不服そうで。
「俺の先輩に産婦人科医がひとりいるけど……凜子をあの人に診せるのは俺、絶対イヤなんだけど?」
具体的に誰かを想像なさっているのか、奏芽さんがすごく不機嫌なお顔をなさる。
「わ、私だって……奏芽さんのお知り合いの方はちょっと」
診て頂くなら見知らぬ女医さんか、年配のおじいちゃん先生がいい。出来れば若い男性は知らない先生でも避けたいと思ってしまう。
思わず真面目にそう返してみたものの、よく考えてみたら、いま話してるのはそういうお話じゃないですよねっ!?
「も、痛、くないですし……その……しゅ、出血、も……ほとんど止まってますの、で……診て頂かなくても……だ、いじょう、ぶですっ」
見られたくない一心でそう言ってしまってから、自分で何て恥ずかしいことを暴露してしまったの!と気がついて恥ずかしくなる。
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