貴方のものだと思えるから

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「片山さんが無理だってんなら俺、何とか都合つけるぞ?」  玄関先で「行って来ます」をして振り返った私に、奏芽(かなめ)さんがそんなことを言って眉根を寄せる。 「お守りも持ってますし、スマホのGPSもオンです」  言って、奏芽さんが前に私のコートに忍ばせておいてくださった、例のBluetooth(ブルートゥース)接続のタグと、スマホを見せる。  タグは、紐を通してカバンの持ち手につけてある。 「それに――」  鎖骨のあたりに服越しに触れてから、「もあるので」と上目遣いに奏芽さんを見上げた。 「けど……」  それでも尚も言い募ろうとなさる奏芽さんに近づくと、私は彼の手を軽く引っ張って、ちょいちょいと手招きをする。 「?」  突然の、何の脈絡もない手招きに怪訝(けげん)そうな顔をしながらも、奏芽さんが少しかがんでくれて。  私はそんな彼の頬に、ちょっぴり背伸びしてチュッとキスを落とした。  自分からこんなことをしたのは初めてだったから、凄く照れ臭かったけど、何だかそうしないと前に進めない気がして。  奏芽さんもさすがに驚かれたみたいで、頬を押さえたままフリーズなさった。
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